俺は、死ぬまで死に抗わせる。
母親から電話があった。
「すぐに帰ってきて、トラがおかしい」
僕はすぐに車で実家に向かった。
トラは僕の実家で飼っている少し太り気味の猫だ。
10年以上前に母親が拾ってきた。
実家に着くと変な鳴き声を出すトラがダンボールに入っていた。
家の横の排水溝に落ちていたらしい。
下半身が動かなくてパニックを起こしていた。
僕は動物病院を調べて母親とトラを連れて行った。
レントゲンを撮ったがやはり車に跳ねられたみたいだ。
自業自得だ。
医師曰くどうやらしばらくしたら死ぬらしい。
ここでこのまま安楽死させるか、若しくは痛み止めを打って死ぬまで生かすか。
僕達は痛み止めの注射を打ってもらい、連れて帰ることにした。
帰りの車の中僕は色々な事を思った。
トラはもう10歳をすぎたじじいだって事。
トラは太っているからおそらく機敏には動けない事。
それをわかっていて外に出るのを許していた僕。
そう、トラは僕が殺したようなもんだ。
だけどトラの事をかわいがっていたのは事実だ。
生かすとか殺すとか人間のエゴだとか何だとかは知らねえ。
トラには悪いが俺のそばで死ぬまで生きてもらう。
この文字を打っている間にも、
だんだんトラの声が小さくなってきた。
トラの鳴き声は明日までもつだろうか。
2020-05-19 by
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